ひやむぎの話

ひやむぎとラーメンの違いは「香味油」の存在が大きい

最近、ラーメン屋に行く機会が増えました。ひやむぎ屋を始めてからというもの、ラーメン好きなお客さんと話す機会が増え、自然と興味も湧いてきたのです。

その中で特にきっかけとなったのは住吉にある「yagu-noodle」というお店。

とある共通のお客様から紹介してもらい、一緒に食事をすることになったりと交流を深めるなかで「ラーメンってそもそもどういう料理なんだろう」と考えることが増えました。

ラーメン店で学んだ“香味油”の重要性

実は一度だけ、そのお店でランチ営業のお手伝いをさせてもらったことがあります。その時、店主から教わったのが「香味油の重要性」について。

ラーメンのスープは大きく分けて3つの要素からできています。

  • 出汁(動物系や魚介系などのスープ)
  • カエシ(醤油や塩などの味付けベース)
  • 香味油(鶏油や背油など、香りとコクを与える油)

特に香味油は、スープの表面に浮かぶため、一口目に感じる「味の第一印象」を決定づけます。この香味油が良くないと、いくら出汁やカエシが良くても、「なんか物足りない…」というラーメンになってしまうのだそうです。

ひやむぎには存在しない“香味油”という文化

一方、当店が扱っているひやむぎや、蕎麦、うどんといった日本の伝統的な麺類では、「出汁」と「カエシ」はあっても、「香味油」という要素は基本的に存在しません。

もちろん、天かすや胡麻油を使ったアレンジはありますが、スープに“浮かせる”前提で香味油を設計するという文化はほとんどないように思います。

唯一、思いつくのが「鴨せいろ」や「鴨南蛮」ですが、香味油と言えるほど油をしっかりと抽出するわけではありません。

同じ「麺類」でありながら、構成要素の発想やアプローチがここまで違うことに、私はとても面白いなと思っています。

麺類であっても「美味しさ」のアプローチが違う

ひやむぎとラーメン、一見まったく違うようでいて、実は「美味しさの構成要素」という視点で見ると、どちらも非常に繊細で、作り手の哲学が現れる食べ物です。

ラーメンに触れたことで、ひやむぎの「シンプルさ」の奥にある自由さや、素材の輪郭を立てる技術の価値を、あらためて再認識するきっかけにもなりました。

これからも、自分の店で出す一杯に向き合いながら、別ジャンルの美味しさにも好奇心を持ち続けていきたいと思います。

ちなみに住吉の「yagu-noodle」、本当におすすめです。

ぜひ行ってみてください。

【店舗詳細】
yagu-noodle

【特撰ひやむぎ きわだち】
東京都墨田区太平1−22−1 ソラナ錦糸町102
(錦糸町駅北口より徒歩8分、東京スカイツリーより徒歩14分)
12:00~15:00 18:30~21:00 (L.O.30分前 / 木・金はランチのみ)
火・水曜日定休
※席がハイカウンター6席のみのため、大人数や小さなお子様はご案内できないことがございます。
※ご予約はネット予約のみで、記載されている指定の時間及びコースのみのご予約となります。

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