お店の話

お店の雰囲気をマネジメントするのも店主の仕事

お店を営んでいると、味やサービスだけでなく、「空気づくり」も料理の一部なのだと感じることがあります。

今回は小さいお店だからこその店の雰囲気づくりについて書いてみました。

小さなお店にある「ちょっと重たい雰囲気」

当店でも土日のランチなどは、事前予約のお客様で満席になることも少なくありません。そんな賑やかさが予想される日でも、いざ始まってみると店内がしんと静まり返っていることがあります。

お一人様だけというわけでもないのに会話がほとんどなく、聞こえてくるのは食器の音や厨房の火の音だけ。

もちろん、それが悪いことだとは思っていません。静かな空間で、ゆっくりと味わいたいという方もいらっしゃいますし、無理に会話を生もうとする必要はないとも思っています。

けれど、あまりにも無言の時間が続いているとき、ふと感じてしまうのです。この空気、少し重たいかもしれないなと。

特に、当店は厨房と客席との距離が近いため、どうしてもこちらの存在感が伝わりやすい。それが良くも悪くも、少し緊張感を生んでしまっているのではないか。

そして、その緊張が、お客様にとっての「居心地のよさ」を少しだけ遠ざけてしまっているのではないか。そんなふうに感じる瞬間があります。

料理は、素材や調理技術だけで味が決まるものではないと、私は思っています。場の空気や気持ちの余裕、五感がどんな状態にあるか、そういった目に見えない要素も、料理の味わいに深く関わっているように思うのです。

だからこそ、「居心地のよさ」はとても大切です。

「美味しい」をつくるには空気感も大切

そうした思いから、私は一番近くにいるお客様にあえて軽くお声がけをしています。

たとえば、「ひやむぎは普段よく食べるのですか?」とか、「うちのお店はどこで知ったのですか?」など、無理のない距離感で、自然に話せる会話のきっかけを作ります。

面白いことに、こうしたやりとりが“呼び水”になることが結構あります。私とお客様が会話を始めると、他の席でも言葉が交わされるようになり、まるで水面に広がる波紋のように、会話の連鎖が生まれることがあります。

そうやってお客様同士の会話があると、不思議と店の雰囲気も和らいでいきます。

私は「料理を楽しむ」という行為そのものに、人との関わりや会話が少なからず影響していると信じています。

もちろん、無理に話す必要はありませんし、静けさが心地よい夜もあります。けれど、ちょっとした言葉のやりとりが、場をあたため、料理の印象さえも変えることがある。それは日々の営業の中で、何度も感じてきたことです。

こういった店の雰囲気づくりも店主の仕事として捉えて、より美味しくひやむぎを楽しんでもらえたらいいなと思っています。

【特撰ひやむぎ きわだち】
東京都墨田区太平1−22−1 ソラナ錦糸町102
(錦糸町駅北口より徒歩8分、東京スカイツリーより徒歩14分)
12:00~15:00 18:30~21:00 (L.O.30分前 / 木・金はランチのみ)
火・水曜日定休
※席がハイカウンター6席のみのため、大人数や小さなお子様はご案内できないことがございます。
※ご予約はネット予約のみで、記載されている指定の時間及びコースのみのご予約となります。

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