麺を作る、というのは、一見すると単純な作業に思えるかもしれません。
けれども、実際に粉と水を合わせ、生地を練り上げ、のばし、切っていくという一連の工程には、毎日が発見の連続であり、小さな驚きが詰まっています。
そして何より、粉から麺をつくるという行為には、特別な効果があるのでは?と感じています。
湿度と気温が、今日の麺を決める
自家製麺の醍醐味は、「昨日と同じにはならない」こと。
気温や湿度、その日の粉の状態によって、生地のまとまり方や水の吸い込み具合が微妙に変化します。
その変化に対して、こちらもまた微調整を重ねていく。水分量をわずかに増やしてみたり、少し寝かせる時間を長く取ったり。
科学のようでもあり、感覚のようでもあるこの調整作業は、決して機械的ではありません。
むしろ、“その日そのときの粉と、どう付き合うか”という、ある種の対話のようなもの。毎日同じようでいて、実は少しずつ違う。だからこそ、飽きることがないのです。
「触れる」という癒しの力
個人的な話になりますが、私はこの「粉を触る」という作業がとても好きです。
手のひら全体を使って生地をこねると、しっとりとした感触がじんわりと伝わってきます。
それは、包丁を握るとかフライパンを振るといった料理の動作とは、まったく別の感覚。もっと原始的で、もっと静かで、心が落ち着くような感覚です。
心理療法のひとつに「砂を触ることで心を癒す」という療法があると聞いたことがあります。
粉と向き合う時間には、それに似たような作用があるのではないかと。生地を練っているときには、ただその感触にだけ集中できます。
麺作りは、だれにでも開かれた楽しみ
ここまでお話しておいてなんですが、これは別に「ひやむぎでなければいけない」ということではありません。蕎麦でも、うどんでも、もちろん構いません。
粉と水をこねて、麺にするという体験そのものが、きっと新鮮で、楽しいものになるはずです。
初めてのときは、うまくいかなくて当然です。私自身も、何度も失敗を繰り返してきました。
でも、その過程すらも、なぜか楽しい。うまくいかなかった日のほうが、記憶に残っていたりするものです。
だから、もし少しでも「麺を作ってみたいな」と思うことがあれば、ぜひ挑戦してみてください。特別なものは必要ありません。少しの好奇心と、少しの根気があれば、それだけで十分。
スープは市販のものでも全然構わないので、自分の手で作るからこそ味わえる「特別な一杯」が待っていますよ。
【特撰ひやむぎ きわだち】
東京都墨田区太平1−22−1 ソラナ錦糸町102
(錦糸町駅北口より徒歩8分、東京スカイツリーより徒歩14分)
12:00~15:00 18:30~21:00 (L.O.30分前 / 木・金はランチのみ)
火・水曜日定休
※席がハイカウンター6席のみのため、大人数や小さなお子様はご案内できないことがございます。
※ご予約はネット予約のみで、記載されている指定の時間及びコースのみのご予約となります。